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高森明勅
2012.10.7 15:59

「尊称だけの内親王」は「法の下の平等」に反する

女性宮家創設に対抗する形で新しく提案された
「尊称だけの内親王」案。

政府内部の検討の結果、「あっさり否定」された。

この案については以前、「高森ウィンドウズ」で問題点を指摘した。

要は、憲法の定める「法の下の平等」に反するってこと。

政府は私見を参考にしてくれたのか、
独自の検討で同じ結論に至ったのか、
とにかく当然の理由で排除された。

ところが、産経新聞の記事などを見ると、
このあたりのことがよく分かっていないようだ。

「尊称だけの内親王」にわずかな前例があると言っても、
それは「身分」制社会でのこと。

憲法は、国民については「法の下の平等」を定め、
明確に「身分」制度を否定する。

天皇とそのご近親でいらっしゃる皇族については、
憲法が国民統合の中軸とする世襲の「象徴」天皇制度との関わりで、
国民に当てはまる「法の下の平等」の範疇外とされる。

当然のことだ。

ところが、尊称だけの内親王は、
既に皇族の身分を離れて、国民になられた方が対象になる。

ならば、「法の下の平等」から外れる訳にはいかない。

よって、国民の中に新たな身分を設けることになる
尊称だけの内親王は、憲法上、否認される他ないのだ。

いや、「身分」制社会を復活すべきだ、
という意見があっても、もちろん結構だ。

だがその為には、憲法改正から手を着けなくてはならない。

「尊称だけの内親王」という提案では、
皇室と国民の区別がよく理解されていなかったようだ。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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